ナチュの森
所在地 | 北海道 白老町 |
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期 間 | 2015~2018 |
面 積 | 4.9ha |
発注者 | ナチュラルサイエンス |
業務領域 | 基本計画、基本設計、実施設計、現場監理 |
協 働 | 小松大佑(建築デザイン監修)
宮田麻貴子(建築空間デザイナー) 竹中工務店(建築設計) 緑花計画(植栽設計) イコロの森(植栽設計) |
綺麗な水の工園
北海道白老町虎杖浜では日本一綺麗なという透明度の高い倶多楽湖の伏流水が沸いている。この綺麗な水をスキンケア化粧品にいかそうと、子ども向けの低刺激スキンケア商品で高い評価を受ける「ナチュラルサイエンス」が廃校になった旧虎杖中学校に新たに工場/社屋/レストラン/ショップ/サロンを新築し、グラウンドをみんなが利用できる公園(工園)のような「潤いある家族の幸せを作り出す」ランドスケープ空間を整備した。
徹底したディスカッション
計画/設計のプロセスにおいて、整備前のグラウンドに設置したテントでの会議、社員計画検討ワークショップ、視察、大型の模型検討、原寸検討などを通し施主であるナチュラルサイエンスとアイデアを膨らませ、そのアイデアを細部にわたって具体的に共有しながら検討および整備を進めた。
広がりをいかした空間構成
旧虎杖中学校のグラウンドは非常に広く、後には倶多楽山がそびえる雄大な土地であり、このおおらかな雄大さをそのまま活かすため、中心に雫の形をした大きな原っぱを作り出した。工場等の建物は敷地西側に配置し、季節風を遮り、その建築残土によっておおらかなマウンドを作り出した。建物カフェエリア前にはハーブが楽しめるテラスを用意し、そのテラスから南側を眺めると子どもの遊び場が広がっている。建物の西側にはカレンデュラ等を無農薬で栽培するナチュラルファームがあり化粧品の原材料として活用している。
柔らかい触りたくなる形と素材
子ども連れの家族や若い女性を利用者ターゲットとして想定している事もあり、細部にわたってデザインは柔らかさに配慮し、子どもがお母さんの肌を触るように子どもがこの施設のどこでも触りたくなるよう、触っても安全であるよう配慮している。
この施設の象徴でもある倶多楽湖の伏流水に触れながら楽しめるよう、ビーチをモチーフにした水路や噴水のある水の遊び場を整備し、この土地の魅力や化粧品の原材料を感じることができる空間である。
歴史を引き継ぐ空間と化粧品会社らしい空間
旧虎杖中学校の歴史を引き継ぐため、校舎の原型保存は元よりエントランスゲートの保存、グラウンドへの階段の位置をそのままにすることで、中学校の跡地の雰囲気を伝承することを目指している。中学校整備の際に父母によって植栽されたエゾヤマザクラやナナカマドなどの樹木はできる限り保全し、その植栽の雰囲気をいかしながら、化粧品会社としてのアイデンティティを示す幹肌の美しい木々を配植した。
田舎のおしゃれな過ごし方
今回のデザイン検討においては、地域にある楽しみ方やデザインを生かすのではなく、あえてこの地区にはないものを持ち込むことで、地域に住む人の生活を少し違った豊かさに持っていけないかと苦心した。白老町虎杖浜地区や周辺にはこのようなデザインや楽しみができる施設がないため、ナチュの森には苫小牧や室蘭など周囲の都市からも多くの人が訪れている。その様子をよく見てみると、地元の人が周辺に住む友人を自慢しながらナチュの森の事を案内している。その光景は、地域に既存にある魅力をいかした施設やデザイン展開だけでなく、あえてないものを新たに持ち込む事で、地域に愛されるあり方もあるのだと再認識した。